深呼吸の音 ― toe「グッドバイ」と、ルーツの夜

toeってバンドを知っていますか?
最近、某動画サイトの THE FIRST TAKE に出演していました。
正直、toeがあのステージに立つこと自体が驚きで、
画面越しに見ながら、いろんなことを思い出しました。

少し個人的な話ですが、
その夜に感じたことを、今回の記事として残しておきます。

初めてtoeを聴いたのは、
まだバンドをやっていた頃でした。
何をしてもうまくいかなくて、どうしていいのかもわからなかった。

ライブが終わるたびに、
“このままでいいのか”という声が頭の中で響いていた。
ほぼ毎日、練習を重ねても、何かが噛み合わない。
努力が空回りしていく感覚だけが積み重なっていった。

それでも、手を止めることができなかった。
止まったら終わってしまう気がした。
ただ、どこへ向かえばいいのかも分からなかった。

そんな僕の日課は、深夜1時や2時に車で走ること。
人気のない甲州街道を、窓を少し開けて、セブンスターに火をつけて走っていた。
冷たい風が頬にあたって、
遠くに見える味スタの明かりだけが、静かに流れていった。

決まって爆音で流れていたのが、toeの「グッドバイ」。
派手なサビもない、
感情を押しつけるような歌もない。
ただ静かに、ときに激しくリズムを刻む音。

でもその音が、不思議と“呼吸”みたいに聴こえた。
自分の鼓動と同じテンポで、
心のざわつきを少しずつ落ち着かせていく。
初めて聞いた時、自然と深呼吸が出たのを覚えている。

「この音の中なら、大丈夫だ」
そう思えた瞬間だったんだと思う。

あの頃、誰かに助けてほしいというより、
ただ“理解されないままでもいい”と思える場所が欲しかった。
toeの音は、その静けさの中で、
「何も変えなくていい」と教えてくれた。

何度も何度も聴いた。
曲が終わっても、すぐにもう一度再生した。
まるで自分の中に残っている“ナニカ”を確認するように。

あの頃の自分に言葉をかけられるなら、
「無理するな、やめちまえ」って言いたい。
でも今なら、その後に
「大丈夫」とも言える。

今になって、あの頃の自分を認めてあげることができた。
あの夜の自分を、ようやく許してあげられるようになった。

「やめる」って、逃げじゃなかった。
生き続けるための選択だった。
その勇気を持てたのは、あの音が静かに背中を押してくれたからだと思う。

今でも、「グッドバイ」を聴くと、必ず深呼吸が出る。
たぶんそれは、身体が“帰ってきた”と感じるから。
toeの音が流れると、
昔の夜の匂いや、
甲州街道の冷たい風、
そしてバックミラーに映る疲れた自分の顔まで、すべて思い出す。

あの音、空気は、誰かにわかってもらえなくても、
自分を壊さずに残すための時間だった。
そして今、静かに仕事をして、
好きなものを形にして、
自分のリズムで暮らしているのは、
きっとあの夜があったから。

この文章は、あの頃の自分を思い出しながら、ルーツとして残しておきたかった。
toeの「グッドバイ」は、あの頃の自分と今の自分をつないでくれる音。
聴くたびに、心が静かに整っていく。

無理していた自分も、立ち止まった自分も、どちらも間違っていなかったんだと思える。

静けさの中にある強さを教えてくれたのは、あの頃の夜と、この曲だったと。

救われた?いや、寄り添ってくれているんだと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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